大きな空気が吸いたくなって海辺の砂浜を歩いた。
 丸みのある木の枝が打ち寄せられているのを見て、一週間前の出来事を思い出した。
 湯梨浜町から夕方の教室に来ている小一の男の子が、到着しても車の中でグッスリなので、お母さんだけが入って来られたのだった。起こさないと後で文句を言われると、心配されるのを制して、「いいから、気もちよく寝かしときましょう。たまにはお母さんが絵でもいかがですか」と、自主的に「しまった!」と入って来るのを待つことにしてみた。
 昼間の遊び疲れか、彼はなかなか起きてこず、みんなは戸口を気にしながらも絵を描き始めた。
 お母さんも腹をくくって久々のくつろぎタイム。と、そのとき、カランコロンと戸が開き、怒りと照れがミックスされた表情の男の子が仁王立ちになっていた。
 「あら、よく来たね。さあ、何をしますか」と招き入れると、席に着くなり、「弓をつくる」とキッパリ。
 「それはスゴイ。人には絶対当てないでね」と約束をして、アトリエ中の枝切れを手渡してみた。
 ゴムだのヒモだのガムテープだのと要求するので、「自分で探して『かして下さい』と言うこと」と一喝すると、みんなの前でのしつけを控えてガマンしていたお母さんがニンマリされた。
 かくて、みんなで見守る中、一本の弓らしきものが完成し、「キケンだから」とつぶやきながら外で手製の矢を放ち、見事に失敗、不発。
 それでいいのだ。つい先日七歳になった彼の未来は果てしない。「またつくるからね」と、明るい顔で気を立て直し、材料を大事そうに持って帰って行った。あの顔は、きっとまた作る。失敗こそが明日への扉だ。
 私は波の音を聴きながら、子どもたちの顔を思い浮かべ、砂浜の枝をいっぱい拾ってアトリエに帰って来た。