子どもたちをアトリエに迎えるとき、私はいつも空想している。
 家の人に「ほら、遅れるで!」とせかされながらクツをはく姿。「月謝袋を先に出しなさいよ」とか注意されつつ父母の車で進む道中。バタンと車から一人でおりて、タタタと走ってアトリエの入り口に向かう浮き立つ気持ち。子どもの心。
 だから思いきり大きな明るい声で「よく来たねえ。こんにちは」と頭をなでたり、抱きしめたりして、今年で十年。
 一回ごとの新しい場面を楽しみ合ってきた。
 「空想してごらん」と、私は語りかけるときがある。(もしも、ゾウがアトリエに入って来たら)(もし、アトリエがせまいから地下室を掘ったら)(もし、動くアトリエだったら)子どもたちは、おもしろがって自分のイメージをワイワイ説明しながら絵を描く。
 ゾウどころか、あらゆる動物がアトリエ中にひしめいて絵を描く姿が一枚の作品になっていたこともあった。
 リク君は、そんなことが人一倍好きで、独特のアートを作り出しているし、どの子もみんな会話しながら、その内容を映像にしているようだ。
 子どものイメージ世界は、どこまでも広く、やわらかい。
 だから、ジョン・レノンの「イマジン」のように、宇宙から見た国境のない地球や、仲良く助け合える人間たちの世界を「空想してごらん」と語るおとながいたら、きっと色のついた画面が、どの子の心にも浮かんでくるはずなのだ。絵本のように、物語のように。
 難しい言葉で遠まわしに話さず、せっかくの命で出会ったんだから、バカげた争いをしているのはもったいないことを先に生まれた人が教えよう。
 安心を空想して絵にかいてゆこうと思う。
 みんなでイメージすれば、きっと社会が変わる。また一年が始まった。